住宅ローンが払えない!こんなはずじゃなかった…。
夢のマイホームやマンションを購入したときには、まさか滞納の危機に陥るなんて思ってもみません。
しかし、住宅ローンのように長期間、高額の分割返済となると、返済途中でさまざまな問題が起こるものです。
- 離婚などの家庭問題
- 会社のリストラ・減俸
- 世帯主の健康状態の悪化
ほんの些細な出来事から、返済の歯車が狂ってしまいます。
「住宅ローンを滞納したらすぐに出ていかなきゃいけないの?」
「支払いできなくなったら勝手に家が売却されてしまうの?」
ここではそんな不安や疑問にお答えしながら、住宅ローンが支払えなくなった場合の解決策をご紹介していきます。
住宅ローンの返済を滞納したまま半年以上経過すると、「期限の利益喪失」「代位弁済」が行われて、残債全額を一括で支払うよう求められることになります。
また、裁判所から競売開始決定通知の送付されたのち、買主が決定しだい退去を命じられることとなります。
このような最悪の事態にならないよう、銀行への相談、早い段階での任意売却手続きや、個人再生・自己破産など、段階に応じた対応策を取る必要があります。
詳しくは本文を参考にしてください。
住宅ローンが払えなくなったらどうなるの?
住宅ローンが支払えなくなり、滞納してしまった場合どのような措置が取られるのか、経過時間ごとに見ていきましょう。
返済遅れがない場合、借り換えができる
これまでに一度も返済を滞納したことがないときには、金利の低い他の住宅ローンの借り換えを検討してみましょう。
- 現在の残高分を新しい融資先から借り入れる
- その融資金で前の住宅ローンを完済する
- 新しい金融機関への返済を開始する
上記がおおまかな住宅ローン借り換えの流れになります。
これまでにクレジットカードの支払いや、携帯電話料金などの料金を滞納していないことが条件となります。
基本的な審査は最初に住宅ローンを組んだときと同じです。
借り換えをしないとき、数日後:引き落としがされていない旨の連絡
借り換えをしない場合、滞納して数日後には、「引き落としがされていません」などと連絡が届き、期日までに入金するよう案内が届くでしょう。
滞納1ヶ月~2か月後:電話連絡、催告状などの送付
担当者からの電話での催促がはじまります。
また金融機関によっては、早い段階で催告状や督促状が送付されることもあります。
この時点ですでに返済できないと分かっている場合でも、「払いたくても払えない」など、きちんとした原因と理由を説明し、銀行側に対して協力的な対応をすることが重要です。
滞納3ヶ月:催告状、督促状の送付
数度に渡って催告状が届き、それに応じない場合督促状が送付されます。
これらの段階ではまだ滞納分を一括で支払うなどすれば対処することができます。
滞納4~5ヶ月:期限の利益喪失予告通知の送付
滞納して4~5ヶ月になると、「期限の利益喪失予告通知」が届き、代位弁済の通知も行われます。
「期限の利益喪失」とは、「契約で取り決めた期限までは借金を返済しなくてもよい」という分割払いする権利が失われることを表します。
期限の利益を喪失すると、債権者からの一括全額返済が求められることになります。
また、それ以上に返済が滞納すると、代位弁済が起こります。
その後は保証会社からあなたに対して、残債の一括返済を求められることになります。
つまりこの2つの通知の意味は、「これ以上返済が滞ると、保証会社から残りの滞納額を一括で返済を求めることになりますよ」という最終警告になります。
滞納6か月以上:代位弁済、全額一括返済へ
滞納が半年以上になると、「期限の利益を喪失」して「代位弁済」が行われます。
この二つが行われると、ただちにローン債務を全額一括で支払わなければなりません。
支払えない場合には住宅を任意売却するか、競売にかけて資金を調達する必要があります。
以下、競売から強制退去までの流れになります。
- 担保不動産競売開始決定通知書が届く
- 執行官と不動産鑑定士の調査が行われる
- 入札開始、落札者が決まり、強制退去へ
担保不動産競売開始決定通知書が届く
銀行側から「競売申立予告通知」が届いたのち、銀行が競売を申し立てると、裁判所から競売開始を決定した通知書が送付されます。
この時点で、事実上住居は差し押さえられたことになります。
執行官と不動産鑑定士の調査が行われる
住宅ローンを滞納してから6ヶ月から9ヶ月で、現状について執行官と不動産鑑定士が調査します。
この際には、書面あるいは電話で事前連絡があります。
住宅の状態や部屋の中など調査を行い、物件の売却価格を決定のうえで競売にかけます。
この後に入札通知が送付され、競売の日程等が明らかになります。
入札開始、落札者が決まり、強制退去へ
入札開始、落札者が決まり、強制退去へ
入札がはじまってしまうと、任意売却手続きを成立させることはできません。
また、新たな買主が決定するまでは住み続けることができますが、落札後にも退去に応じない場合は即座に強制執行が執り行われます。
住宅ローンの支払いができない場合の解決策
それでは、住宅ローンの支払いができない場合、どのような対策を取ればよいのでしょうか。
家計の見直しと固定費の削減
あなたがはじめて返済期日に間に合わなかった場合には、その原因となった支出があるはずです。
それを突き止めることや、滞納が恒久的なものか一時的なものかどうかを見定めるため、まずは家計の見直しを行いましょう。
また固定費の削減も重要なポイントです。
毎日の食費や光熱費、電気代など、いま以上に節約できるところはないか、検討しましょう。
それでも返済が難しい場合には、次の項目に移っていきます。
金融機関への相談
住宅ローンの借り換えが難しい場合には、住宅ローンを借りている金融機関に相談することができます。
そのうえで、返済期間の変更・延長(リスケジュール)を行ってください。
また、ボーナス返済月を変更することも大きな手だてのひとつです。
銀行によっては、リスケジュールに対して厳しい姿勢で応じない場合もありますが、「返済する意思がある」ということを訴え、粘り強く誠意を持って交渉しましょう。
リスケジュールは借り換えを検討したあとに
リスケジュールを行ってから住宅ローンの借り換えを行おうとすると、審査の際に大きなマイナスポイントと取られる場合があります。
銀行側としても、返済にあたって難がありそうな顧客を引き入れたくないのです。
まずは住宅ローンの借り換えができないかどうかを優先して考えるようにしてください。
分譲賃貸で返済する
住宅ローンが払えない場合、自宅を賃貸に出して、賃料で返済する方法があります。
これはいわゆる分譲賃貸と言われる物件です。
この場合は、以下のような流れになります。
- 不動産業者を訪問して、客付けと管理を依頼する
- 借り主が見つかったら、賃貸の安い住宅等に移って生活費を少なくする
- 借り主からの家賃で住宅ローンを支払っていく
競売、または任意売却をする
競売と任意売却の違いは、「裁判所が売却するか(競売の場合)」「自分が売却するか(任意売却の場合)」です。
どちらも今住んでいる住宅を手放し、返済のための資金に換えることになります。
ただし競売の場合は市場価格より低い値段で売却されることが多く、結果的に債務者も金融機関も損をしてしまうため、銀行によっては「任意売却をしませんか?」という通知が届くころもあります。
任意売却とは?
銀行に許可をもらって、自分で住宅を売却することを「任意売却」といいます。
任意売却手続きスタートのタイミングは「競売開始決定通知」が届いたころまでが限界だと言われています。
ですので、できるだけ早い段階から銀行へ誠実に対応しておいて、任意売却をするとなったときに話がこじれないようにしておくとよいでしょう。
また、多くの不動産会社に査定を申し込み、できるだけ高値で売却できる業者を選ぶことで、残債を減らすことができます。
将来的に返済が不可能だと分かった段階で、任意売却を検討してください。
夜逃げは現実的ではない
もしもあなたが夜逃げを考えているのならあまりにもリスキーな考えであると言わざるを得ません。
以下に紹介するように、住宅ローンの返済について工面する方法はたくさんあります。
いつまでも逃げ続け、借金取りの影に怯えながら、住民票もないために働き口も見つからない…。そのようなことは非現実的です。
しかし、そんな生活を送る覚悟は不要です。
あなたにもできる解決策がまだ残されています。
法的機関を利用した解決策
さらにここからは、裁判所などへの申し立て、その詳細についてご紹介していきます。
個人再生を申し立てる
住宅ローン以外にも借金を抱えている場合には、個人再生の申し立てを考えてください。
個人再生とは、裁判所に申し立てを行い、借金の中の1~2割の一定の金額(最低100万円)を3年の分割払いで借入している銀行に返済し、残った借金は免除となる制度です。
さらに、個人再生には「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」と呼ばれる特則があります。
これは住宅ローンの返済はそのままで、他の借金の減額を認めるというものです。
自己破産する場合には住宅など財産の処分が行われますが、この住宅ローン特則では住居を手放さずに借金の整理をすることができます。
住宅ローンと他の借金で苦しい生活を強いられている人には非常に有用な制度と言えます。
参考:裁判所「住宅ローンに悩むサラリーマン」
厳しい条件を充たす必要がある
しかしこの特則を受けるためには、様々な厳しい要件を充たしている必要があります。
もちろん個人再生そのものの要件も満たしていなければいけません。
個人再生の大きな条件としては、下記のようなことが挙げられます。
- 借金の住宅ローン以外のものの合計が5000万円以下であること
- 収入が継続的に将来にわたって確保できること
また個人再生したとしても、返済計画通りにできない場合は借金が減額されないため、間違いなく成功するとは言い切れません。
申立や手続きに時間、費用が必要
また手続きも非常に複雑で、多くの書類、さらに時間と手間、そして費用がかかります。
個人での手続きを自分一人で進めることは現実的ではないので、一般的には弁護士などに依頼することとなります。
また、費用としては下記のようなものが必要です。
- 申し立てに1万円の手数料
- 1万2千円の余納金
- 弁護士への依頼料
裁判所によっては個人再生委員を選ぶ場合があり、約15万円の報酬が必要となっています。
このように非常に費用のかかる手段であるため、頭金が用意できない場合などには手をつけるべきではありません。
自己破産の申し立てを行う
自己破産とは、大量の借金を抱えた人が裁判所に申し立てて「免責許可」を受けることで、借金を帳消しにするという制度です。
裁判所から「免責許可」を受けるには、客観的に見て支払いが不可能である、と判断されなければなりません。
住宅を含む財産をすべて失うことになる
自己破産した場合には、自己破産した人が持っている全ての財産は失われます。
「全ての財産」を換金して債権者への支払いに充てることになるため、もちろん不動産の売却も必須です。
よって住宅はもちろん、20万円以上の株券や生命保険、積立金なども、債権者への返済金に充てられることとなります。
住宅ローンの返済が終わっていない場合はもちろんのこと、そうでない場合であっても、住宅は競売にかけられたのちに換金されますので、結果的に持ち家を失うことに変わりありません。
したがって自己破産手続きは、
- 個人再生や任意売却では解決できない
- 現在収入がない
- 怪我や病気で働くことができず、返済できそうにない
- 抱えている借金が多額で、返済見込みがない
など、他にどうしようもない場合の最終手段となります。
借金のための借り入れは自転車操業になる
住宅ローンの返済を滞納しているからといって、カードローンや貸金業者からお金を借り入れることは絶対にやめてください。
ローン返済のための借り入れは、やがて自転車操業に繋がることになります。
上記のように、借金を増やすこと以外にもできる対処法はたくさんあります。
まずは自分にできることを一つずつこなしていくことを優先してください。
まとめ:できることは全部やる、勇気を出して第一歩を
住宅ローンが支払えない場合の対処法について、たくさんのことをご紹介しました。
この中にひとつでもあなたに役立つ方法があれば幸いです。
住宅ローンが払えないとき、そして競売開始決定通知が届いてしまったとき、おそらく大きな不安とパニックに見舞われることと思います。
返済を滞納したまま、どうしようもなくなる事態になるまでは一般的に約半年程度の猶予があります。
まずは落ち着いて、できることから一つずつ、誠実な対応ですべてこなしていきましょう。
あなたが本当に守るべきものはマイホームではなく、自分の命と家族だということをどうか忘れないでください。
監修者:福谷陽子 元弁護士 ライター >プロフィールはこちら |