- 「子どもの給食費が払えない…」
- 「給食費の未払い問題が話題になったけど、実際に滞納してしまったらどうなるの?」
義務教育は無償だから給食費を払わない!
そんな保護者の意見も多いなか、様々な家庭状況から給食費が払えないと悩む親も少なくありません。
さらに給食費を滞納してしまうことが、新たないじめの火種となるケースもあるのです。
このページでは実際に給食費を滞納するとどうなるのか、またその解決策をご紹介していきます。
給食費を払えるけど払っていない場合
- 子どもに給食が提供されなくなる可能性アリ
- 最終的には法的措置も
- 強制執行で財産の差し押さえが行われることもあります
給食費が経済的な理由から払えない場合
- まずは学校へ相談しましょう
- 所得や条件によっては就学援助制度が利用できるかもしれません
最近では給食費取り立てのため、弁護士に業務委託する市町村もあります。
また、給食費の滞納で弁当持参を通告された例もあり、新たないじめの火種となる可能性も。
詳しくは本文を参考にしてください。
月の給食費はどのくらいかかるのか
平成27年度の文部科学省の調査結果では、小学校で月額約4,301円、中学校で月額約4,921円となっています。
出典:https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa05/kyuushoku/kekka/k_detail/1381230.htm
学校別給食費 | 月額 | 年額 |
小学校 | 4,301円 | 51,612円 |
中学校 | 4,921円 | 59,052円 |
つまり小学校6年間でかかる給食費は309,672円。
中学三年間では177,156円となっていますから、義務教育を終えるまでに約48万の給食費が必要ということになりますね。
一日あたりの給食費は?
現在は栄養バランスの整ったボリュームたっぷりの献立が提供されていることはご存知のとおりです。
主食となるごはん・パンのほかに大きな汁物などのおかずと、小さめのおかず。
デザートのプリンや、フルーツポンチなどがつくところもあります。
飲み物としては牛乳がつくところがほとんどではないでしょうか。
給食を実施している小学校では月に20食ほどが提供されます。
単純計算で考えれば、一日あたりなんと215円程度。
幼いころの私たちが当たり前のように食べていた給食は、実はこんな超低額だったのです。
社会人となったいま、215円で昼食を済ませるとなると…満足なランチにはできませんよね。
給食費の徴収状況は?
では実際、給食費の徴収状況はどうなっているのでしょうか。
こちらは平成24年度の徴収状況で、同じく文部科学省の調査結果です。
出典:https://www.garbagenews.net/archives/1977004.html
未納の児童生徒の割合
- 公立小学校 41.5%
- 公立中学校 58.5%
2012年度の時点では、調査対象となった小中学校における未納の概算額が4534万9000円。
これを学校全体数の比率から逆算すると、全国の小中学校全体では約22億6000万円となっており、相当な未納額となっていたようです。
なお、それでも2012年度の調査では、2010年度の調査結果よりは改善していました。
教師・保護者ともに、意識改善が行われていった段階ともとることができますね。
未納者の意見はどのようなものか?
経済的な理由で払えない、といった保護者以外に、
- 「義務教育は無償なので払わなくてよい」
- 「学校が勝手に提供しているのに払うのはおかしい」
- 「給食制度に反対している」
- 「払っていない家庭もあるのに不公平だ」
- 「お弁当でいい」
- 「給食がまずい」
などいった意見・理由があるようです。
しかし義務教育とは「子どもが学校に行かなければならない義務」ではなく、「保護者が子どもに教育の機会を与える義務」なんです。
無償になるのは「教育」であり、必ずしも給食費まで無償になるという意味ではありません。
保護者は当然支払うべき義務を負います。
給食費の支払いに関しては「学校給食法」という法律で保護者が負担するよう定められているので、未納のままでいると、最終的に法的措置も取ることができるわけです。
ただし、最近では給食費を無償化する自治体も増えています。
給食費を滞納するとどうなる?
では、実際に給食費を滞納するとどのような措置をとられるのか見ていきましょう。
児童に給食が提供されない、ということは基本的にない
経済的理由から保護者が給食費を支払えず、児童が給食を食べられない…という事例は少ないです。
学校側も、それは児童に対して不公平であるし、いじめの要因になり得ると考えているようです。
しかし、「じゃあ未納でもいいのでは?」「払えるけど払わなくていい」などと考える保護者が増えてしまった結果、給食を提供しないと決めた学校の事例も出てきました。
滞納したままだと子どもに給食が提供されないことも
滞納していると当然、電話や家庭訪問、プリントなどで督促があります。
督促を無視していると、本当に給食を与えられなくなる例があります。
たとえば、埼玉県北本市立の中学校4校では、3か月給食費の未納が続いた場合には児童に対し給食を提供しないことを取り決め、生徒に弁当を持たせるよう学校だよりで通知しました。
このケースで対象となった保護者は度重なる督促に応じず、学校側への相談もなかったとのこと。
給食にはコストがかかっています。
滞納するということは、学校給食全体の質が下がる原因にもなります。
教育費用の未払いの最終的なしわ寄せは、何も知らない子どもに及んでしまうんです。
最終的には法的措置も
前述のとおり、給食費の支払いは「学校給食法」で定められているので、差し押さえや強制執行などの法的措置が取られる場合もあります。
実際に悪質な滞納者に対し、自治体が給食費納付と遅延損害金を求めて裁判所に提訴した事例もあります。
このケースでは、自治体が保護者に内容証明付きで催告状を送付したあと、まったく音信不通となったため、法廷で接触するしかない状況でした。
参考:https://www.sankei.com/region/news/150604/rgn1506040041-n1.html
大阪市では給食費の未納金が1億円を超えていますが、滞納した給食費の回収業務の一部を、弁護士に委託することを決定しました。
これにより、高額滞納者への督促、裁判所への申し立てなどを一任するとのこと。
弁護士が訴訟を起こして裁判所から強制執行が下った場合、預貯金など財産の差し押さえが行われることになります。
自分の親が自分の給食費のことで法廷に被告として立つ姿を、子どもはどんなに悲しい気持ちで見ることになるのでしょうか。
参考:https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000289140.html
給食費が払えないときはどうすればいいの?
では、意図的に給食費を払っていないのではなく、本当に経済的な理由で給食費が支払えず困っている場合、どのようにすればよいのでしょうか。
学校側へ相談する
学校側へ連絡し、事情を説明したうえで相談することを第一に考えてください。
まずは担任の先生に連絡をしてみましょう。
「給食費を支払いたい」という意思表示が何よりも重要です。
学校側としてもそれがあるだけで、今後の対応を考えてくれます。
相談すると、大体どのくらいに支払いの目途が立つか尋ねられます。
現在の支出やお給料日の兼ね合いを考えて、しっかり予定を明らかにしてくださいね。
就学援助制度を利用する
就学援助制度とは、文部科学省が実施している制度です。
経済的な理由から学校に通うことも困難な家庭や、生活保護を受給している世帯に対して、教材費やクラブ活動費、給食費などを、市町村が援助してくれる制度となっています。
対象となる世帯
- 生活保護を受けている世帯
- 生活保護を受けていないが、総所得額が各自治体で定めている基準額以下の世帯
その他にも自治体によっては、ひとり親世帯であったり、児童扶養手当を受給していたり、国民年金保険料を免除されている場合には申請を行うことができるところがあります。
所得制限がありますので、詳しくはお住まいの地域・市区町村のホームページから確認するようにしてください。
補助対象となる主な品目(自治体によって異なります)
- 学用品費
- 体育実技用具費(体操服・体育帽など)
- 新入学時児童生徒学用品費など
- 通学用品費
- 通学費
- 修学旅行費
- 校外活動費
- 医療費
- 学校給食費
- クラブ活動費
- 生徒会費
- PTA会費
このように、学校給食費もしっかりと補助対象とされています。
他にも修学旅行費や、学校病治療のための医療費なども、条件に該当する場合、申請によって支援を受けることができます。
どのように申請するの?
新学期がはじまったあと、学校側から申請書が配布されます。
(子どもがプリントとして持って帰ってくるなかに入っています。)
その申請書に必要事項の記入と必要書類のコピーを添付、学校に提出しましょう。
または、各区役所などでも申請できるケースがあります。学校や役所に相談しましょう。
どのくらいの金額がもらえるの?
自治体によって異なりますが、大阪府八尾市の小学一年生の場合、
- 学用品など 12,990円
- 学校給食費 41,350円
- 入学準備金 20,470円(一年生に限る)
など、年間74,810円が援助されています。
このほかにも臨海・林間学舎費や修学旅行費、医療費なども支給されます。
(校外学習の費用は学用品などの費用に盛り込まれています。)
ちなみに、小学校でかかる年間の給食費が約51,612円でした。
ですので、上記の制度を利用できると、給食費として自己負担する額は年間10,262円となります。
就学援助を受けるための条件や所得制限を確認して、生活に困っているという方にはぜひ考えてほしい制度ですね。
お金を借りる
給食費が払えないまま学校側に相談することもないと、状況は悪化するばかりです。
それでも、どうしてもお金が足りない、費用が払えないけど学校や他の保護者に知られたくない…。
そんな時は、銀行や消費者金融のカードローンでお金を借りて支払う、という方法も視野に入れてもいいかもしれません。
しかし利息が高い業者も多いため、最終的に生活をさらに圧迫してしまう可能性もあります。
やむを得ずお金を借りるときには、契約内容や返済シミュレーションをしっかりと行ってから、必要分だけを借り入れるよう心掛けてください。
まとめ:まずは学校へ相談、就学援助の利用ができるか確認しよう
誰もが学校で、毎日当たり前のように食べていた給食。
それが自分の子どもにだけ提供されない…なんて、本当に胸の痛む光景ですよね。
「どうしてあなただけ給食がないの?」という仲間はずれ意識から、いじめに発展する可能性も十分にあります。
給食費を払えるのに払わない保護者は一定数存在しています。
義務教育だからとか、払わなくてもいいとか、法律で定められている以上、そんな言い分は全く通用しません。
払いたいのに払えない、というときには、このページでご紹介したように、まずは学校側へ相談してみてください。
また、生活保護を受けている場合やそれに近いケースでは、積極的に就学援助の申請を行ってください。
「払わなくてもいい」と放置していると、最終的なしわ寄せはすべて子どもが受けることになります。
そういった事態にならないよう、まずは相談の第一歩踏み出してくださいね。
監修者:福谷陽子 元弁護士 ライター >プロフィールはこちら |