学習塾やピアノやサッカー教室など、習い事の出費はけっこう痛いですよね。
夏期講習や冬季講習など一時的にまとめて払う教育費もかなりの出費です。
でも心のどこかで、「支払いが遅れても、ちょっとくらいなら大丈夫かも…」そう思っていませんか?
月謝とは、何かを教えてもらったことへの「対価」です。
1カ月、2カ月と滞納していれば「借金」と同じです。
借金は債務ですから、払わなければ「債務不履行」、最悪あなたの大切な財産を差し押さえられてしまいます。
そこで習い事の月謝を支払わないとどうなるか、解説と解決方法をお伝えします。
月謝を滞納していると、以下のような流れで財産を差し押さえられる可能性があります。
- 督促状(教室から)
- 催告書(内容証明)
- 支払督促(裁判所からの督促)もしくは裁判
- 差し押さえ
そうならないためにあなたがやるべきことは、「支払えない」とわかった段階ですぐに連絡すること。
解決方法としては、
- 短期で返せるならカードローンで借りる
- 返すのが長引きそうなら保険を担保にして借りる
- 返せそうにないなら保険を解約する
払えないと差し押えを行使するところも
まずは「学習塾やピアノ教室などの習い事の月謝を滞納する」ということはどういうことかをしっかりと認識してください。
「たかが○○教室の月謝ぐらい…」などと侮ってはいけません。
確かに月謝の未払いは万引きや窃盗と違って犯罪にはなりません。
しかし、教室側からすれば月謝を顧客に請求する「権利」があります。
滞納が続けば訴訟を起こせますし、判決が下ればあなたの財産を「差押え」することも可能なのです。
また、初めから月謝を踏み倒すつもりで入会していたとなると「詐欺罪」となり刑事罰が与えられる可能性もあります。
電話や対面での催促で払わなければ督促状が届く
月謝の場合先払いになっていることが多いので、支払期限が「前月の25日まで」「前月末まで」となっていると思います。
支払いが遅れていると、25日払いであれば月末に、月末払いであれば翌月の10日頃には、電話や直接対面で「どうなっていますか?」と聞かれるパターンが多いでしょう。
教室といっても、個人で経営しているところもあれば、組織として企業が運営しているところもあります。
フランチャイズでお教室をやっているところもあるでしょう。
それぞれ対応は違ってきますが、ここでは「最悪のケース」を想定して解説していきましょう。
「法的手段」という文言が書かれていたら要注意
電話や対面での催促が来ても払わなければ、次に「督促状」が届きます。
督促状は「請求書」のようなもので、「月謝○月分が未納なので○月○日までに支払ってください」というニュアンスのことが書かれています。
その督促を無視して払わない場合、良心的なところであれば何度か督促を送ってきますが、以下のような言葉が文面に記されていたら注意してください。
「期日までにお支払いが確認できなければ、不本意ながら法的手段を検討せざるを得ない」
最近は悪質な滞納者が多いため、教室側も対応が厳しくなり、「法的手段」という言葉が入っていることも多いです。
この場合、次の「催告書」を飛ばして、一気に訴訟になることもあります。
できればこの段階で未納分を払えるようにしましょう。
最終警告となる「催告書」が内容証明で届く
督促状が届いても払わないと、次の段階として「催告書」が届きます。
催告書とは、未払いのお金を請求する書類という点では督促状と同じですが、法的手段をとるということが書かれており「最終警告」だと考えてください。
催告書の文面としては、先ほどの督促状と同様に「期日までにお支払いが確認できなければ~」などと同じような内容になっていることが多いのですが、大きな違いは、「内容証明」で送られてくるということです。
内容証明とは?
「誰が」「いつ」「誰に」「どのような内容の文章」を送ったかということを郵便局が証明してくれる、いわば公的な文章です。
裁判の場面でも有効なので、相手側は「法的措置の準備をしていますよ」と暗に警告しているわけです。
実際に「支払をしない場合には、民事訴訟等の手段を検討します」などと書かれていることも多いです。
催告書が届いても支払えないようなら、とりあえずその旨を連絡することが大切です。
「払いたいけど払えない…」と悩んでいたとしても、連絡をしない=払う意思がない=悪意がある、とみなされてしまいます。
とにかく迅速に対応しましょう。
裁判所から判決と同じ効力のある「支払督促」が届く
それでも、払わないでいるとどうなるのでしょうか?
次の段階として「訴訟」「支払督促」の2つのパターンがあります。
学習塾やピアノ教室の月謝であれば、2~3カ月滞納しても2~3万円か、多くて5~6万円というところだと思います。
このような場合「訴訟」ではなく「支払督促」をされるケースも多いです。
支払督促とは?
「裁判所」から届く請求書(督促状)が届き、異議を申し立てなかったら財産を差し押さえられてしまう手続きのこと。
参考:https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201504/1.html#anc01
「支払い督促」が届いたら必ず2週間以内に返事をすること
催告書は教室からの通知でしたが、支払督促は裁判所からの通知になります。
催告書(内容証明)に比べより法的効力が強く、届いてから2週間以内に何らかの返事をしなければ、「一括支払いに同意した」とみなされます。
なので、一括で返済できない場合は、裁判所に異議申立をしないと、「差し押さえ」をされてしまいます。
つまり、支払督促には裁判の判決と同じ効力があるということです。
「2週間以内」と期日が決まっていますので、支払督促が届いたらくれぐれもそのまま放置することなく、何らかの回答をしましょう。
最悪、口座や給料が「差し押さえ」される
支払督促でも払わない・払えないと、次は「財産の差し押さえ」となります。
財産の対象となるのは、現金、預貯金、住宅、土地、車、宝飾品などがあり、銀行口座を差し押さえられる可能性もあります。
給与の差し押さえは「職場」に連絡がいってしまう
差し押さえが行われると、裁判所や債権者から職場に連絡をされます。
会社に伝われば肩身が狭いだけではなく、上司から叱責を受けて噂が広まり、退職を迫られる事態にも発展しかねません。
2、3万円の滞納で職場にそのような連絡がいくことを考えれば、月謝を滞納することはあなたにとってリスクが大きすぎるはず。
差し押さえになる前に、何とかしなければなりません。
払えない場合の解決策
「払いたくない」という方は別ですが、「払いたいけど払えない」という方も少なくないでしょう。
ここからは月謝を滞納し払えない場合の解決策についてお話します。
とにかく「連絡」をする!
月謝に限らず、現実には払えないけど「払う気はある」というのであれば、まずは教室に連絡をすることです。
- 滞納したことへのお詫び
- すぐに支払えないことの報告とお詫び
- 分割や延納は可能かの相談
以上の3つを、電話なり対面なり、FAXでもいいので伝えてください。
「どの方法」よりも「いつ」連絡するかが重要です。
誠意を示すためにも、できるだけ早急に対応しましょう。
その際、できるだけ払える目安を伝えることが重要です。
「もう少し待ってください」ではなく、「来月末に」「今月末から3回の分割で」など具体的に言えると相手も「それならば待ちましょう」となりやすいので意識してみてください。
短期間で返せるならカードローンから一時的に借りる
「キャッシングは金利が高いから…」
そうやって躊躇してしまう方も多いのですが、金額が少なく一時的な借り入れならカードローンという解決法もあります。
カードローンで10万円未満のお金を借り入れると、金利は一番高いカード会社で20%です。
20%といっても年利になるので1カ月にすると1.6%。10万円の借り入れであれば、1カ月の利息は1,600円、3カ月で4,800円です。
教室を続けたくて、3カ月ぐらいで返せる目途があるのであれば、カードローンを利用するのが一番手っ取り早くて簡単ではあります。
返すのが先になるなら保険の返戻金から借りる
返すまでにもう少し時間がかかりそうという場合なら、「解約返戻金」のついている保険から借り入れするという方法があります。
正式名は「契約者貸付制度」と呼ばれています。
契約者貸付制度とは?
あなたが加入している保険を担保に、その保険会社からお金を借りること。
契約者貸付制度のメリット
- 金利が3%前後と安い
- 返すのは「ある時払い」なので返済に追われなくてすむ
デメリット:カードローンよりメリットは大きいが融資まで1週間前後かかる
返戻金を利用した貸付制度なら、カードローンに比べてメリットはかなり大きいです。
ただし融資までには1週間ほどの時間がかかり、返済できなければ保険が失効してしまいます。
「明日にはお金を用意しなくちゃ!」という場合はキャッシングに頼るしかないでしょう。
また、保険の種類や保証期間によっては、貸付制度はあるけど制限にひっかかって借りることができない場合もあります。
詳しいことは、あなたが加入している保険会社に確認してみましょう。
返済できそうにないなら保険を解約する
「返済の目途が立たない」というのであれば、思い切って保険を「解約」するという方法もあります。
「解約返戻金」がついた保険であればお金が戻ってきますし、返戻金がない保険でも、毎月支払っている保険料を月謝に回すことができます。
もちろん万一に備えての保険ですし、特に「終身保険」の場合、貯蓄性が高いので安易に解約をすると後悔することになりかねません。
しかし、死亡時や入院時の保障が高ければ、それだけ保険料も高いので解約することでかなり月々の支出が減ってラクになるはず。
いくつか保険がある場合、保険金額が100万円以下の保険から先に解約すると良いでしょう。
保険を見直す、「払い済み」にする方法も
「せっかくだから解約はしたくない」というのであれば、保険料の安いプランへの見直しや「払い済み」という方法もあります。
払い済みとは?
これまでに支払った保険料の総額の範囲内の保障を残し、保険料の支払いはストップする制度。
解約してしまうと、これまでの保険料をドブに捨てるようなものになってしまいます。
「月々の保険料分だけでも減らせれば月謝が支払える」という方には、「見直し」や「払い済み」を検討する価値があるでしょう。
まとめ:月謝滞納を甘く見てはいけない!子どもに心配をかけないためにできること
「習い事の月謝が払えない…」
あなた自身の習い事ならまだいいかもしれません。
けれどそれがお子さんの習い事であれば、何とも言い出しづらいですし、心配をかけてしまいますよね。
ここでご紹介した解決策はあくまでも一時的な方法です。
今後も月謝を払えそうもないのであれば、とにかく教室を「退会」しましょう。
生活の立て直しができ、そのときに必要だと感じたらまた習い事を始めても遅くはありません。
もちろん、何カ月か先に確実にお金が入ってくるようになるのであれば、一時的な「休会」を検討してみるのもありです。
大切なのは「今」をどうするかです。
あなたが滞納している相手にも生活はあります。
とにかく、「払えない!」と思ったらすぐに連絡を入れることか始めましょう!
監修者:福谷陽子 元弁護士 ライター >プロフィールはこちら |