- 「生活費で手一杯なのに、親の介護の負担分が増えてやっていけない」
- 「介護の自己負担分が増えて払えない…」
あなたもこのような問題で悩んでいませんか?
30代、40代の方にとっても介護問題は他人事ではありません。
2017年8月から、所得により自己負担の割合が2割に引き上げられ、さらに負担が大きくなっています。
介護費用の自己負担分が払えないとどうなるのでしょうか?
その流れと解決策をお伝えします。
介護費用は予想以上にかかりますが、公的サービスは年々手厚くなっています。
ただし、介護保険料そのものを滞納している場合、最悪、公的サービスを一切受けられない可能性もあります。
そうなると経済的な家族の負担も大きくなります。
そうならないための解決策には
- 保険料の「減免」措置を利用する
- 介護保険の「高額介護サービス費」をもらう
- 民間の介護保険に入っておく
- 「日常生活用具給付等事業」を利用する
- 介護で仕事を休むなら「介護休業給付金」をもらう
- 将来の介護に備えておく
といった方法があります。詳しくは本文を参考にしてください。
月々にかかる介護費用の平均は77,000円
生命保険文化センターの調査によると、介護にかかる一人あたりの平均費用は月額77,000円となっています。
また、同センターの調べによると、介護期間の平均は4年9カ月(56.5カ月)。
つまり、月々にかかる介護費だけで…
「77,000円 × 56.5カ月 = 435万500円」
こんなにもかかることになります。
その他にも、下記のような必要に応じて費用がかかります。
- 介護のために車イスやポータブルトイレを購入
- リフトや手すり、昇降階段を取り付けたりするために家をリフォーム費用
- 介護の度合いによっては有料の介護施設に入所
このように、介護には何かとお金がかかってしまいます。
※出典:生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(平成24年度)」
まずは自己負担の額を確認しておきましょう。
介護サービスには2つの種類があります。
- 居宅サービス・・・自宅で受ける介護サービス
- 施設サービス・・・老人ホームなどの施設で受ける介護サービス
なお、施設であっても老人ホームなどに住んでいる場合は、居宅サービスの対象となります。
居宅サービスを受けるのにかかる費用は以下のとおりです。
介護度 | 月間利用限度額 | 自己負担額(1割) | 自己負担額(2割) |
要支援1 | 50,030円 | 5,003円 | 10,006円 |
要支援2 | 104,730円 | 10,473円 | 20,946円 |
要介護1 | 166,920円 | 16,692円 | 33,384円 |
要介護2 | 196,160円 | 19,616円 | 39,232円 |
要介護3 | 269,310円 | 26,931円 | 53,862円 |
要介護4 | 308,060円 | 30,806円 | 61,612円 |
要介護5 | 360,650円 | 36,650円 | 72,130円 |
施設サービスなど利用料の詳細はこちらのサイトでご確認ください。
『サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」』
介護費の自己負担分が払えないと最悪介護が受けられない場合も
では、介護費の自己負担分が払えない場合にどうなるのでしょうか?
そもそも介護保険料を払っていない・・・
介護保険を利用出来る場合、現行の制度では利用者の負担割合は2割です。
しかし原則として、介護保険料を払っていなければ、介護保険の利用はできません。
そもそも40歳以上の方は、「皆保険制度」といって国民の義務として保険料を支払わなければならないのです。
介護保険の財源は私たちの保険料や税金で賄われています。
- 保険料:50%
- 国の負担金:25%(調整交付金を含む)
- 都道府県、市町村の負担金:25%
理由もなく滞納していれば介護給付を受けられません。
介護保険料を支払わなかったらどうなる?高額な利用料を自己負担しなければならない
介護保険料を1年以上滞納した場合、介護サービスの利用料を全額自己負担しなければいけません。
この段階では後日申請すれば、自己負担分を引いた分の金額が戻ってきます。
しかし、滞納して1年と半年以上経過すると、上記に加えて滞納した金額が支給金額から引かれ始めます。
2年以上滞納し続けると、上記2つに加え、自己負担の割合が3割に引き上げられてしまうことになります。
将来的に仕事もできなくなることを考えると、きちんと納めていくほうがお得
- 「1割から2割になったから負担が大きくて…」
- 「今すぐ必要じゃないのに…」
今すぐ必要ではないものにお金を使うのは、正直辟易としてしまいますよね。
しかし介護保険もあくまで「備えのひとつ」であり、将来のことを考えたもの。
いつまでも安定して仕事ができるわけではありません。
介護を受けるご本人が亡くなった場合、滞納していた保険料もあなたやあなたのご家族が相続することになります。
払えなくても介護を受けられることも…
自己負担分が払えないからと、今受けているサービスが即中止になることはありません。
ただし、あなたが払えない分を誰が負担しているのか?
サービスを受けた医療機関が負担を被ることになります。
利用者が自己負担分を支払えないとなれば、いつまで医療機関がその状態で引き受けてくれるか…が問題です。
法律では医療側も「受け取る義務」がある
「払わなくても介護サービスをしてくれるなんて、それでいいんじゃない?」
そう思うかもしれませんが、健康保険法第74条では、当然ですが患者は「支払う義務」があり、医療側には「受け取る権利」があるのです。
支払わなければ法的な請求を受ける可能性があります。
それに将来、自分自身がその医療機関やサービスを利用する可能性もゼロではありません。
現在の介護の現場は常に悲鳴を上げており、待遇の向上や給与アップ、人員確保などが常に叫ばれています。
そんな中で介護費用を払わない、という選択は、将来の自分の首を真綿で締めているようなもの。
介護現場をブラックにしているのは誰なのか、もう一度考え直す必要がありそうです。
介護保険の対象にならないサービス
そもそも1割、2割の自己負担ならばいいほうで、介護には保険対象とならないサービスもかなりありますので把握しておきましょう。
- 食費・・・施設などでの食事代
- 施設費用・・・介護保険施設や老人ホームなどに入る際の入所一時金や保証金、居住費や短期入所のときの滞在費
- 家賃・・・老人ホームやグループホームなどの家賃や管理費、共益費など
- 光熱費・・・電気・ガス・水道代
- 交通費・・・訪問や通所サービス利用時の交通費
その他、施設利用時のおむつ代や入浴の際のタオルやシャンプー、娯楽費や理美容代などの日常生活費も介護保険の対象外となります。
払えない場合の解決策。減免措置他、救済制度の活用を。
では、「介護保険は払うもの」という大前提で、具体的に払えない場合の解決策を見ていきましょう!
- 保険料の「免除」「減免」措置を利用する
- 介護保険の「高額介護サービス費」をもらう
- 民間の介護保険に入っておく
- 「日常生活用具給付等事業」の利用
- 家族の介護で仕事を休むなら「介護休業給付金」
- 今から介護に備えておく
1.保険料の「免除」「減免」措置を利用する
自己負担分が払えないようなら保険料を払うのも大変なはず。
まずは保険料の「免除」「減免(軽減)」を受けましょう。
介護保険料が免除されるケース
条件 | 必要な書類 | 免除期間 |
災害で住宅や家財に損害を受けた場合 | 罹災証明書 | 6ヶ月間 |
監獄・労役場に1ヶ月以上拘禁された場合 | 在所証明書 | 収監日を含む月~退所日を含む月の前月 |
世帯生計維持者の収入が、障害・入院で減少した時 | 入院証明書など | 6ヶ月間 |
世帯生計維持者の収入が、倒産・失業で減少した時 | 離職証明書など | 6ヶ月間 |
世帯生計維持者の死亡時 | 死亡証明書 | 6ヶ月間 |
ここでいう「世帯生計維持者」とは、第1号被保険者を指します。
国民健康保険に加入している場合、その保険料を滞納すると介護保険料も滞納、ということになります。
介護保険料が減免されるケース
- 世帯全員の住民税が非課税である
- 生活保護を受給していない
- 介護保険料の滞納がない
- 健康保険や医療保険の扶養に入っていない
- 世帯の収入・資産の総額が、市区町村で定められた金額を超えていない
介護保険料を減免してもらうためには、上記の条件をすべてクリアしていなければいけません。
またこれらの減免制度は、各市区町村によって制度が異なっています。
申請が通れば最大で7割ほどの減免が見込めますが、どのくらい負担が軽減されるのかも地域ごとに異なります。
まずは各市区町村の役場で相談すると良いでしょう。
2.介護保険の「高額介護サービス費」をもらう
世帯の合計所得により、決められた上限を超えた額については「高額介護サービス費」として支給されます。
該当する方は、市町村に申請しましょう。
設定区分 | 対象者 | 世帯上限額 |
第1段階 | 生活保護者等もしくは世帯全員が市町村民税非課税で老齢福祉年金の受給者 | 15,000円 |
第2段階 | 世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金収入額+合計所得金額が80万円以下 | 24,600円 |
第3段階 | 世帯全員が市町村民税非課税で、本人の公的年金収入額+合計所得金額が80万円超 | 24,600円 |
第4段階 | 市区町村民税課税世帯(第5段階に該当する場合を除く) | 37,200円 |
第5段階 | その者の属する世帯内に課税所得145万円以上の被保険者がおり、かつ、世帯内の第1号被保険者の収入の合計額が520万円(世帯内の第1号被保険者が本人のみの場合は383万円)以上 | 44,400円 |
「高額医療・高額介護合算制度」を利用する
介護費用以外に、通常の医療費の合計が年間56万円を超えた場合には、「高額医療・高額介護合算制度」の申請を行いましょう。
すると、介護費だけでなく医療費の超過分も払い戻してもらえます。
3.民間の介護保険に入っておく
介護には予想以上にお金がかかるもの。
公的支援だけでは賄いきれない場合が多いので、民間の介護保険に入っておくと「いざ介護!」となったときに経済的な負担が軽くなります。
民間の介護保険には主に3種類あります。
- 一時金型
- 年金型
- 一時金型と年金型の併用
どんな内容かは保険会社によっても異なります。
注意すべきは「要介護度連動型」なのか「保険会社独自型」なのかということ。
- 要介護度連動型・・・公的要介護の認定があれば給付される
- 保険会社独自型・・・保険会社独自の基準で給付される
特に独自型の場合、どのような状態になると保険金が給付されるかを事前に確認したうえで加入しましょう。
いざというときに保険が適用されないと困ります。
4.「日常生活用具給付等事業」の利用
杖や入浴用のイスなど自費で購入してしまった方もいるかもしれませんね。
介護費用を少しでも安く抑えるために利用したいのが、自治体の「日常生活用具給付等事業」です。
自治体から介護に必要な用品の貸与や給付が行われます。
借りられる、あるいは給付される補助具には、入浴補助用具や移動用リフト、特殊マットや床ずれ防止用具などがあり、障害の種類や「要介護なのか」「要支援なのか」などによっても異なります。
詳細については、各市町村の「介護給付課」「介護福祉課」へ確認してみください。
5.家族の介護で仕事を休むなら「介護休業給付金」
大切な家族が介護状態になり、あなたやご家族が仕事を休んで介護にあたる場合は「介護休業給付金」を利用しましょう。
この制度は雇用保険に加入していれば受けることができます。
休業期間中は、休業前にもらっていた賃金の4割相当が給付されます。
1家族につき通算93日まで利用することができ、申請は基本的に会社側が行うので、利用したいときにはあなたから会社にその旨を伝えましょう。
介護休業給付金を受けるための条件は?
- 雇用保険に加入している
- 家族の介護のために休業している
- 介護休業をはじめる前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が、12ヶ月以上ある
介護休業給付金を受けるためには、労働者として雇用されて働いていなくてはいけません。
また介護休業後、職場復帰することを前提に申請しなければいけません。
さらに雇用主には「あらかじめ休む期間」を伝える必要があり、休業中の給付金は休業後に支払われます。
つまり介護休業中にそれを補填するお金が貰えるわけではない、ということを把握しておきましょう。
なかなかうまく使うのが難しい制度ですが、「お金がない」という状況を回避するためにも知識として備えておいてください。
6.今から介護に備えておく
介護は、経済的にも、肉体的にも、精神的にも負担がかかります。
そして介護負担が必要になるのはある日突然のことであり、何の備えもなければ大変なことになります。
「いざ!」というときのために、今から介護に備えておくことはとても重要です。
- 「人脈」を備えておく
- 「費用」を備えておく
- 「知識」を備えておく
例えば、「1日だけ、1時間だけ介護を代わってもらう」「買い物や家事を頼む」など。
兄弟や友人、ご近所の方など「いざ!」というときに頼める人脈を築いておけば自分一人で背負うこともなく、負担は軽くなります。
経済的な備えも必要です。
今から計画をしてコツコツと貯めておきましょう。
また、介護の知識を今から備えておくことで「いざ!」というときに役立ちます。
まとめ:介護に向けてできるだけ備えを
あなたに合った解決策は見つかりましたか?
また、「いざ介護!」となってから慌てないためにも、親の収入や資産を把握しておくことも大切です。
「親に収入や資産のことを聞くのはねぇ…」
そう思われるかもしれません、あなたが40代、50代だとしたら、親世代のほうがもらえる年金も充実しています。
あなたがすべての面倒を見られなかったとしても負担に感じず、「経済的な部分は親自身のお金で」と割り切って考えてもいいのではないでしょうか。
いずれにせよ「備えあれば憂いなし」。
いざというときに困らないようコツコツと備えておきましょう。
またどうしても払えない方も、ここでご紹介した解決策を参考に、介護の負担が少しでも軽くなるよう願っています。
監修者:福谷陽子 元弁護士 ライター >プロフィールはこちら |