「念願のマイホーム、でも固定資産税が払えないと手放さなくちゃいけないの?」
そんな悩みを抱えている方に向けて、固定資産税を払わないとどうなるのかをお伝えします。
- 固定資産税を払わないとどうなるのか?
- どんなものが差し押さえの対象になるのか?
- 滞納していると延滞税がかかるのか?
- 延滞税を払わなくてすむ方法はあるのか?
- 固定資産税を「ゼロ」にする方法はあるのか?
いずれの方法にしても、あなたの「誠意」を見せることが重要です。
払えないからと督促状を無視していると家や車などの財産を「差し押さえ」られ、会社や取引先からの信頼を失うことになります。
固定資産税が支払えない場合、以下のような解決策を取ることになります。
- 分納
- 猶予
- 減免
また家や車などの財産を残しながら税金を分割で払う方法や、滞納していた税金を払わずにすむ方法があります。
督促状が届いた段階で素早く対応する方が良い
最初に安心しておいてほしいのは、払えないからといって、すぐに差し押さえが行われるわけではない、ということです。
督促から差し押さえになるまでの流れは概ね以下の通りです。
- 督促状
- 電話や訪問での催促
- 差し押さえのための財産調査
- 差押通知書・差押予告書
- 差し押さえ実行(強制執行)
- 公売にかけられて財産を処分
納税通知書の納付期限までに払わないと、20日以内に督促状が送られてきます。
この時点での対応が一番のポイントになります。
この段階で、「払う意思はあります」という誠意を見せることが大切です。
督促状が届いたのに無視していると、相手は「払う意思がない」と判断します。
その後、催促の電話、自宅への訪問などといった直接的な催促がはじまります。
できれば督促状が届いた段階で、自分から相談に行くよう心がけてください。
財産調査が入れば会社や取引先に連絡がいく
督促状が届いたのに支払わないとなると、次に「差し押さえ」という処分を受けることになります。
もちろん、いきなり差し押さえが行われるわけでありません。
しかし法律では「いつでも差し押さえることが可能」と決められています。
「まだ大丈夫だろう」と気楽に構えていては危険です。
差し押さえを実行するにあたり、事前に「財産調査」が行われます。
- 自己所有の不動産はあるのか?
- 預金はいくらぐらいあるのか?
- 解約返戻金が発生する保険はないのか?
つまり財産調査が入れば、取引先にも連絡がいき「売掛金はありますか?」と訊ねられることになります。
これにより、取引先の信用を失う可能性が高くなります。
また、この段階まできてしまうと、後程ご紹介する「納税の猶予」といった分納払いの緩和措置を利用することは難しくなります。
できるだけ督促状の段階で支払ってしまいましょう。
なお、固定資産税は国ではなく各自治体の管轄になります。
実際に督促状が送られてくる日数や差し押さえの実行される日数については自治体によって異なります。
給与や年金は差押の対象、児童手当は対象外
差し押さえられる財産にはどのようなものがあるのかというと、すべてのものが対象となるわけではありません。
差し押さえられたものは公売にかけられ、そのお金で滞納していた税金に充当されます。
ですので、換金できないようなものと生活や仕事に必要最低限のものは差し押さえられません(国税徴収基本通達主要事項第47条)。
差し押さえられる財産
- 不動産
- 有価証券
- 車
- 宝石
- ゴルフ会員権
- 電話加入権
- 給与
- 年金
- 退職金
- 敷金
基本的に、金銭的価値があるものすべてが対象です。
差し押さえられない財産(差押禁止財産)
家財道具、衣類、3カ月分の食料や燃料、生活保護費、児童手当、仕事に最低限必要な道具などが対象外です。
「競売」と「公売」の違いについて、たとえば住宅ローンでいえば金融機関が売りに出すのが「競売」で、この場合、裁判所に申し立てをする必要があります。
一方、「公売」は滞納分の税金が回収できない場合に国や自治体が直接売りに出す手続きであり、裁判所に申立をする必要がありません。
納付期限後1カ月を過ぎると延滞金が高くなる
次に、固定資産税を払わないでいると発生する延滞金について見ていきましょう。
税金を期限までに払わなければ「延滞税」という税金が加算されます。
本則では、納期限後1ヶ月以内であれば年7.3%、1ヶ月を超えると年14.6%の延滞金がかかります。
ただし、延滞金には「特例基準割合」が設定されており、特例の割合が本則を超える場合のみ、本則の割合を適用します。
現在の特例基準割合は以下の通りです。
ご覧のように以前と比べれば利率は安くなりましたが、期限後1カ月以内と1カ月以降ではかなり利率は違います。
できるだけ1カ月以内に払うようにしましょう。
※この割合は、平成31年以降変更される場合があります。
固定資産税・延滞金の割合(利率)の推移
納期限後 1カ月以内 |
納期限後 1カ月以降 |
|
平成20年1月1日~平成20年12月31日まで | 年4.7% | 年14.6% |
平成21年1月1日~平成21年12月31日まで | 年4.5% | 年14.6% |
平成22年1月1日~平成25年12月31日まで | 年4.3% | 年14.6% |
平成26年1月1日~平成26年12月31日まで | 年2.9% | 年9.2% |
平成27年1月1日~平成28年12月31日まで | 年2.8% | 年9.1% |
平成28年1月1日~平成28年12月31日まで | 年2.8% | 年9.1% |
平成29年1月1日~平成29年12月31日まで | 年2.7% | 年9.1% |
平成30年1月1日~平成30年12月31日まで | 年2.6% | 年8.9% |
今すぐ滞納額を全額払えない時の解決策
では、いよいよ払えない場合の解決策についてお伝えします。
固定資産税は、もともと1期、2期、3期、4期に分かれた分割払いになっています。
通常の納期に支払えない場合には3つの方法で解決することができます。
- 通常分納
- 納税の猶予
- 換価の猶予
手っ取り早く行うなら「通常分納」
通常分納は、滞納していた分の固定資産税を分割で支払う方法です。
役所にて徴収担当者と口頭で約束すれば、後日分割払いのための納付書が届き、その用紙で支払うことになります。
滞納の常習犯でなければ、電話でも対応してくれる自治体が多いです。
「時間がなくて相談に行けない」とずるずると先延ばしにしているなら、電話で通常分納の相談をしてみてください。
手続きは簡単だが延滞税は免除されない
分納の良い点は、手続きが非常に簡単だということです。
ただし、延滞税は免除されません。
また、せっかく分納にしてもらっても期日までに払わないと、「弁明の機会」が与えられなくなって言い訳できなくなり、「差し押さえ」のリスクを避けることが難しくなります。
通常分納のメリット
- 手続きが簡単
- 分割で支払うことができる
通常分納のデメリット
- 「延滞税」は免除されない
- 「弁明の機会」を与えられない
- 「差し押さえ」のリスクを避けられない
分納は1年で払い終えるのが原則ですが、事情によりさらに1年の延長が認められます。
ただし、延長するためには「収支状況や財産の有無」など、本当に延長が必要かどうか細かくヒアリングされます。
安易な気持ちで延長を申し出ると逆に「誠実さに欠ける」とみなされかねませんので注意してください。
条件に該当すれば受けられる「納税の猶予」
「延滞税まで払えない」という方におススメなのが「納税の猶予」という方法です。
ただし手続きが面倒ですし、この制度を利用するには一定の条件をクリアしなければならないので「誰でも利用できる」というわけにはいきません。
本当に困っている方は担当者に相談してみましょう。
納税の猶予は、以下6つの条件のどれか1つに当てはまれば利用することができます。
- 災害や盗難にあった
- 本人や家族が病気やケガをしてしまった
- 事業で著しい損失を受けてしまった
- 事業が休止・廃止してしまった
- 災害・盗難・病気・ケガに類似するようなことが起きた
- 事業の休止・廃止・著しい損失に類似するようなことが起きた
延滞税が50~100%免除される
「納税の猶予」の一番のメリットは、延滞税を免除してもらえることです。
払えない理由が(5)(6)の場合は50%。
(1)~(4)であれば延滞税が100%免除されます。
デメリットとしては、やはり「手続きの面倒さ」と「条件の厳しさ」です。
ただ、滞納している固定資産税の額が大きいのであれば延滞税もそれなりの金額になりますので、この方法を検討してみましょう。
納税の猶予のメリット
- 分割で支払うことができる
- 「延滞税」が50~100%免除される
納税の猶予のデメリット
- 手続きが面倒
万一払えなくてもすぐに差し押さえはされない
納税の猶予の流れは以下の通りです。
- 徴収猶予申請書と必要書類の提出する(申請)
- 現在払える分(現在納付可能資金額)を振込む
- 行政による書類審査
書類審査が通れば、めでたく猶予を受けた分割払いのスタートとなります。
審査に通らなければ「猶予不許可通知書」という通知が届くので、60日以内であれば「異議申し立て」をすることも可能です。
納税の猶予については、国税庁のホームページで調べると出てきます。
とりあえず猶予が利用できる条件に該当するようであれば、まずは窓口に相談に行き、その際に詳しく聞くようにしましょう。
「納税の猶予」により分納がスタートしたら、くれぐれも納期に遅れないことです。
この段階で滞納していると、せっかく認められた猶予を取り消されてしまう可能性があります。
ただし、納税の猶予の場合、言い訳をする「弁明の機会」が与えられます。
遅れてしまった事情が正当であれば、すぐに財産を差し押さえられることはありませんので安心してください。
差押解除、延滞金50%免除の「換価の猶予」
「すでに差し押さえられてしまった」というケースもあるかもしれません。
「差し押さえ」を解除し、残っている税金を分割にしてもらえる方法が「換価の猶予」です。
また、換価の猶予が認められると、新たに差押を受けるおそれがなくなります。
差し押さえられた財産を公売により処分されてしまうと、生活や事業に支障をきたすと認められた場合などに利用することができます。
利用できる条件は以下の通りです。
換価の猶予が利用できる条件
- 差し押さえられた財産を処分されてしまうと、生活や事業に支障をきたす
- 固定資産税以外の税金を滞納していない
- 納税への誠実な意思がある
例)
- 差し押さえられた家を売却されてしまうと住む家がない
- 営業用の車を公売にかけられると仕事にならず滞納していた税金を払う目途が立たない
「換価の猶予」のメリット・デメリットは以下の通りです。
認められる確率は低いがダメ元で相談してみる価値あり
メリットが大きい方法ですが、窓口に相談に行っても「換価の猶予」が認めることは少ないと言われています。
しかし、財産を差し押さえられると事態は深刻なので、まずはダメ元で相談に行ってみるのもアリです。
また、「換価の猶予」は納税の猶予と異なり、「申請」ではなく「お願い(上申)」となります。
つまり猶予するかどうかは自治体の一存です。
申請したいときには「換価の猶予に関する上申書」と必要書類などを用意し相談に行きます。
なお既に財産を差し押さえられている場合、そもそも「滞納して差押え」になってしまったという時点で、「誠実な態度」に欠けていた、という認識をされる可能性が高いです。
相談の際は「担当者に邪険にされても仕方がない」に思っていた方が良いかもしれません。
ただしこれらの猶予は法律で認められている緩和措置ですので、行政も簡単にはねのけて良いというものでもありません。
邪険にされることも考え、ICレコーダーなどで担当者との会話を録音しておいてもいいでしょう。
もちろん、あくまでも「誠意」をもって相談することは大前提です。
滞納分をゼロにできる「滞納処分の停止」
「猶予の条件に該当し分納が認められたとしても、実際には払えない…」
そんな方には、「滞納処分の停止」という方法があります。
この方法の最大のメリットは、滞納していた固定資産税を「ゼロ」にできるという点です。
利用できる条件は、国税徴収法大153条第1項により以下のように決められています。
滞納処分の停止が利用できる条件
- 差し押さえる財産を売却しても滞納分の回収が見込めない
- 滞納処分により生活できなくなるおそれがある
- 滞納者の居場所(住所)と財産が不明
「滞納処分の停止」は一般の個人にも個人事業者にも適用されます。
適用条件はさまざまですが、効果として「自宅は売らずに」「事業を続けながら」滞納処分の停止を利用し、滞納していた税金をゼロにすることが可能です。
この方法も「換価の猶予」と同じく滞納者が申請する「権利」がないので、適用してもらうためには窓口に「お願い」に行かなければなりません。
すると行政の調査と審査が行われ、めでたく認められれば「滞納処分の停止通知書」が届き、3年が経過すると納税義務が消滅します。
すると、これまで滞納していた固定資産税を払わなくてもすみます。
どうしても固定資産税が払えないときはどうすればいいの?
では、固定資産税をどうしても支払えないような状況にある場合はどうすればよいのでしょうか。
- 任意売却を検討する
- 固定資産税は自己破産では解決できない!
任意売却を検討する
固定資産税を支払えず滞納を続けてしまい、このままでは差し押さえられてしまう。
そうしたときできるだけ早い段階で検討すべきなのは「物件の任意売却」です。
未納税金があっても、物件の売却は可能ですが、すでに差し押さえられている場合には注意が必要です。
差し押さえ登記がなされている場合、その解除を行わなければ任意売却を行うことはできません。
差し押さえ解除を行うためには住宅ローン債権者や市町村・都道府県などのすべての債権者の許可が必要になります。
しかし税を徴収する市区町村側としては、基本的には税収を優先するため、差し押さえ解除の許可を出すことに難色を示すようです。
そこで、もう固定資産税は払えない、と判断した段階で、「差押前」に任意売却という選択肢を視野に入れておくとよいでしょう。
ただし任意売却を行う際、不動産の買主との交渉の際に税金滞納がマイナスに働いて、売却代金の減額を要求されるかもしれない、ということを念頭に置いておくようにしてください。
固定資産税は自己破産では解決できない!
固定資産税を払うだけのお金がなく、任意売却もできず、差し押さえを受けようにも財産や給与がない。
そんな時考え付く最終手段として、「自己破産」が挙げられます。
自己破産とは債務整理方法の一種で、裁判所を通して免責許可を取り、抱えている債務の支払い義務をなくすことができる手続きです。
しかし、固定資産税は「税金」という国民の公的な支払い義務のひとつです。
自己破産や個人再生などによる法的手続きを踏まえても、これらの支払い義務がなくなることはありません。
このように、たとえ自己破産したとしても、固定資産税を含め、税収はどこまでもついて回るものです。
ローンや家賃、携帯料金など必ず支払うべきものは他にもたくさんありますが、まずは税金のことを優先的に考えたほうがよいでしょう。
まとめ 督促が届いたらまずは「分納」の相談に行くこと
固定資産税を滞納して困っている方にとって、必要な情報を盛り込みました。
どの方法にするのがベストなのかを検討する参考にしてください。
とにかく一番重要なのは、「払う意思はある」という【誠意】を示すことです。
そのためには、督促が届いた段階で電話をするなり直接役所に足を運ぶなりして、分納の相談をすることです。
特に事業をされている方は、「来月になれば売掛金が回収できるはず」といった予定があったとしても、実際には入金されない可能性もあります。
こういった場合も、分納にしておくことで万一に備えることができます。
予定通りにお金が入ってきたら、その段階で「一括で支払う」という手もあります。
いずれにせよ、税金は国民の義務。「滞納処分の停止」以外は原則として逃げられません。
「払えないからどうしよう」と一人で悩む前に、確実に解決できる方法を選んでいきましょう。
監修者:福谷陽子 元弁護士 ライター >プロフィールはこちら |