「今年も赤字で消費税が払えない…」
あなたも消費税のこんな悩みで頭を抱えていませんか?
今回は消費税を払わないとどうなるのかについて解説します。
また「払いたいけど払えない」方のための「分納」「猶予」「減免」といった解決法をお伝えします。
消費税は、自ら申告して納付する税金。
消費者から一時的に預かっているお金ですので、「払わない」もしくは「過少申告」をしていると『脱税』とみなされてしまいます。
そうならないためにも、重要なのは「誠実に対応する」ということです。
消費税について詳しく知らないという方も意外と多く、きちんと理解することで今後の経営にも活かすことができます。
まずは消費税の基礎知識を簡単に説明しておきます。
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消費税は住んでいる地域の財源にもなっている
あなたが納付している消費税には種類があり、2つに分かれています。
- 消費税
- 地方消費税
消費税
8%のうち6.3%に該当し、国税となるため管轄の税務署に納付する。
地方消費税
残りの1.7%に該当し、地方税となるため各自治体に納付する。
ただし、私たちが消費税を払う先は税務署になります。
すると、税務署から8%のうち1.7%が自動的に各自治体に納められる…という仕組みになっています。
消費税は私たちが住んでいる地域の大切な財源としても使われているということです。
支払いは個人事業主が3月末、法人は決算後2カ月以内
次に確認の意味も含めて消費税の支払いに関しておさらいしましょう。
消費税の納期限は、個人事業主の場合が3月末日までとなっています。
確定申告の締め切りが3月15日なので半月間の猶予があるということです。
法人の場合、決算日後2カ月以内です。
消費税を払わなくてもよい「非課税事業者」
国民には納税の義務があるので、本来は消費税を必ず払わなければなりません。
しかし、「事務の負担軽減」「小規模事業者の保護」という観点から、支払わなくてもよいケースが法律によって決められています。
個人事業主の場合
- 前々年の売上が1,000万円以下
- 前年の1月~6月の売上が1,000万円以下もしくは給与などの支払額が1,000万円以下
法人の場合
- 前々期の売上が1,000万円以下
- 前期の1月~6月の売上が1,000万円以下もしくは給与などの支払額が1,000万円以下
- 年度開始の資本金が1,000万円未満
法人の場合は、個人事業主と異なり「年度(期)」で区切られ、資本金の条件も加わります。
以前は(2)の条件はなく、2013年から新たに加わったので「あれ?」と思われた方もいるかもしれません。
以上の条件をクリアすれば消費税は支払わなくて大丈夫です。
督促状から10日以内に払わないと差し押さえの可能性も
消費税を支払わないと、具体的にどうなるかを見ていきましょう。
まず、納付期限を過ぎると50日以内に税務署から督促状が届きます。
原則として督促状が届いて10日以内に払わないと、いつ「差し押さえ」をされても文句を言えません。
昔に比べ悪質な滞納者が増えたことで、最近は ≪督促→差し押さえ≫ までの期間が短くなってきています。
ですので、督促が届いて期日までに払えない場合は、すぐに税務署に相談するようにしましょう。
督促から差し押さえになるまでの流れは概ね以下の通りです。
- 督促状
- 電話や訪問での催促
- 差し押さえのための財産調査
- 差押通知書・差押予告書
- 差し押さえ実行(強制執行)
納付期限の翌日からかかる延滞税
次に払うのが遅れた場合の「延滞税」ですが、これは単純に納付期限に支払わなかった際に課せられる税金のことです。
税率は以下の通りで、税金の納付期限の翌日から加算されます。
以前は、2カ月以上払わないでいると14.6%もの延滞税がかかっていましたが、平成26年度以降からかなり割合も低くなってきています。
それでも年利9.1%あります。
期限の翌日から納付するまでの日割り計算なので、納税額が多ければ延滞税もそれなりの額になります。
延滞税の割合 (単位:年%) | ||
期間 | 納期限翌日から2カ月まで | 納期限翌日から2カ月以降 |
平成23年度 | 4.3 | 14.6 |
平成24年度 | 4.3 | 14.6 |
平成25年度 | 4.3 | 14.6 |
平成26年度 | 2.9 | 9.2 |
平成27年度 | 2.8 | 9.1 |
取引先にも通知が行くため信用を失う可能性が
消費税を払わないと延滞税がかかるだけではなく、「信用を失う」という大きなリスクもあります。
「差し押さえ」になると、不動産や社用車、賃貸事務所であれば敷金返還請求権も押さえられることになります。
しかし、それだけではありません。
銀行口座を押さえられてしまえば入金出金、振り込みなどの取引もできませんし、取引先への売掛金を差し押さえられると相手に連絡が行きます。
裁判所から「差押決定通知」や「売掛金がいくらありますか?」といった連絡が行けば、当然、取引先からの信用を失うことになります。
悪質な場合は40%の重加算税がかかる
「2年前に1,000万円以上の売上があり黒字だったので消費税もきちんとプールしていました。
ところが、翌年から売上が落ち、ついつい貯めておいた消費税に手を付けてしまった…」
滞納者によくあるお話ですが、だからといって決して「ごまかそう」などと思わないことです。
冒頭で「払わなければ脱税とみなされる」とお伝えしました。
厳密に言うと、支払う段階ではなく、「申告(確定申告も含む)」をしないことで「脱税」とみなされます。
消費税には、「期限」までに納付しなかったことで課せられる「延滞税」だけではなく、「申告」をしないことで課せられる「無申告加算税」や「重加算税」があります。
ただし、「悪質」とみなされた場合なので、「つい間違えて経費を二重計上してしまった」といった「うっかりミス」などは対象外となります。
ちなみに、申告日までに申告はしたものの、その額が実際よりも少なかった場合、納税額の50万円までは10%、50万円を超える部分には15%の「過少申告加算税」が課せられます。
ただし、税務調査が入る前に、自主的に修正申告を行えば加算税を課せられることはありません。
分割払いになる「納税の猶予」「換価の猶予」
では、払いたいけど実際に払うお金がない―
という場合にどうすればいいのか、についてお伝えしていきます。
税務署は、「どうしても一括では払えない」という事業者に対して2つの納税緩和措置制度を設けています。
納税義務や差し押さえを解除する「滞納処分の停止」
「社用車を差し押さえられて仕事にならず滞納している税金が払えない」
という事業者の方であれば、「滞納処分の停止」という緩和措置を利用しましょう。
ただし、この制度を利用できる条件は、差し押さえをされることで生活保護を受けなければならないほど窮迫するおそれがある場合です。
ケースにもよりますが、この措置を受けることができれば差し押さえが解除されたり過去の税金支払い義務が消滅したりします。
ですので、とにかく一人で悩んでいないで即刻、税務署に相談してください。
消費税の支払いを1カ月だけ延ばすことも
滞納分の消費税には関係ないのですが、確定申告をする際、「すぐに消費税を納めるお金が用意できない」というのが明らかであれば、支払い方法として「振替納税」を選んでおくという選択肢もありです。
こうしておけば、「1カ月」だけですが、本来の納付日をずらすこともできます。
まとめ 信頼を失わないためにも消費税はプールしておこう!
法人税は儲かっていなければ当然払わなくてすみます。
しかし、消費税はもともと消費者から一時的に預かっているお金ですから、決算で赤字だったとしても払わなければなりません。
税率も5%から8%に上がっていますし、税金の中でもっとも滞納者が多く、全体の半数以上が未納になっています。
今後、8%から10%に消費税が増えれば、ますます滞納者は増えるでしょう。
だからと言って、払わなければこんなデメリットがあります。
- 今後、銀行からの融資を受けにくくなる
- 取引先からの信用を失うこともある
- 役所の入札ができなくなる可能性もある
- 倒産に追い込まれることもある
特に急に売上が伸びた年には突然消費税がかかり始めるので要注意で、当然、仮受けとなる消費税額も多くなります。
翌年業績が悪くて資金繰りに困ったりすると、ついつい貯めておいた消費税に手を付けてしまいやすいのです。
消費税の納税資金を用意するために、今後は運転資金と別口座を作り「仮受消費税」をプールしておき、プールした消費税には手を付けないようにしましょう。
万一、手を付けてしまい納付期限までに払えなくなってしまった場合には、すぐに税務署に出向き相談をしましょう。
監修者:福谷陽子 元弁護士 ライター >プロフィールはこちら |