救急車を呼ぶこと自体は特にお金はかかりません。
しかし最近は無料がゆえに悪質な呼び出しを行っている患者もいて、それが問題になっています。
ただ勘違いしている人もいますが、必ずしも無料というわけではありません。
救急車を呼んだとき、どんなケースだと費用が発生するのか見ていきましょう。
もちろん、救急車を呼ぶのに、基本的にはお金はかかりません。ですが、ケースによっては「救急搬送診療料」が発生することもあります。
救急車を悪質に利用した場合だと、法律違反になってしまうことも…。
本文では、救急車を呼んでお金が発生する時や、法律違反になってしまう使い方を詳しく解説しています。
救急車って呼ぶとお金はかかるの?
救急車を呼ぶこと自体は無料だと思っている人がほとんどではないでしょうか。
実は、お金が発生するケースがあることをご存知ですか?
救急車が無料とそうだない場合について解説していきます。
基本的には無料
救急車を呼んで搬送してもらうこと自体にお金はかかりません。
これは国からの税金で成り立っている制度ですから、患者が乗車料などを払うことはありません。
しかし無料と思って救急車で病院に行き診察を受け、改めて診察料をチェックしたら、お金がかかっているケースもあります。
その費用は「救急搬送診療料」というものです。
例えば、急を要する時、救急隊や救命士の他に医師が同行してくれることがあります。
そこで病院に着く間に応急処置や診療行為を行うと救急搬送診療料が発生します。
医師が診療した場合は、どんなケースでも診療報酬点数が1,300点加算されます。
1,300点は費用にすると1万3,000円。
そしてもし診療した相手が新生児、または6歳未満の乳幼児の場合、1,500点、あるいは1,300点に700点を加算する方法のどちらかが採用されます。
そしてこの診療時間が30分を超える場合は長時間加算として、さらに700点加算されます。
これは距離ではなく時間なので、例えば、救急車が渋滞などに巻き込まれ、それだけ長い時間救急車にいると診療報酬点数も増えてしまうということです。
軽傷だと料金がかからない?
上記、重大な事態では医師が同行するケースがあると紹介しました。
しかし、症状によってはすぐに重症か、軽症か判断できない時があります。
救急隊や救命士だけの措置の場合、病院に所属する医師ではありませんから、緊急搬送診療料がかからないことが大半です。
しかしこれが現在一般の方にも知れ渡ってしまっているため、大きな問題になっています。
そもそも救急車を呼ぶのは緊急性があるときだけ。
自力で歩けたり、交通手段があるのに救急車を呼ぶのはマナー違反です。
しかし、タクシーで行くより無料の方が良いと考える悪質な患者が後を絶ちません。
その結果、現在では救急車を呼ぶ際、有料化にすべきではないかという議論が持ち上がっています。
その場でお金がかからなくても法律違反になることも
救急車が無料だからといって、不適切に使用すると法律に触れてしまうこともあります。
どのような法律違反になるのか知っておきましょう。
- 消防法違反
- 偽計業務妨害
消防法違反
救急車を不適切な使い方(呼び方)をすると、訴えられる可能性があります。
日本には「消防法」というものがあり、「国民の生命、身体および財産を保護する」という法律があります。
その中で虚偽の通報、申告をした者は消防法違反に該当すると記されています。
例えば、電話では重症かのように伝えて、実際はたいした病気や怪我でもないのに、タクシー代わりに救急車を使ったとなれば、虚偽の申告にあたります。
ただ、この適用は難しいのが現状。
例えば、自分では重症だと思っていても結果的には大したことがなかったというケースもあるからです。
虚偽で申告しているのか、それとも本当に重症だと思っているのか判断が難しいため、逮捕に至るケースは稀です。
ただ、明らかに何回も救急車を繰り返し呼んだりした場合は確信犯と判断され、消防法違反となり逮捕対される可能性があります。
偽計業務妨害
こちらも消防法違反と似た部分がありますが、業務を妨害したり、誘惑したり、欺いたりすることを指します。
救急隊員にとってみれば、本当に重度な患者さんを救急車で運ぶのが仕事。
しかし大したことがない患者をわざわざ救急車で運ぶことで、他の重度患者やけが人を迅速に迎えに行けなくなってしまう可能性が出てきます。
これは十分、偽計業務妨害にあたるので罪に問われます。
ただ、こちらも消防法と同様、過度な業務妨害にあたらないとなかなか逮捕にまで至りません。
救急車ではありませんが、過去の例で言うと、ある企業に3ヶ月間無言電話をかけ続けて業務を妨害したとして逮捕された事例があります。
このように、過度な迷惑行為にならないとなかなか適用までいかないのが現状です。
1回、2回タクシー代わりに救急車を使ったとしても現在の法律では、その患者を取り締まるというところまでには至りません。
最近の救急車事情とは
悪質な使い方をする人が後を絶たないと、救急車の利用も厳しくなってしまうことが考えられます。
- 有料化への移行も
- 状態の細分化把握
有料化への移行も
現在、救急車で搬送された人のうち約半数ほどが軽傷者となっているようです。
本来は重度の患者のための車両ですが、現実的には軽傷でも利用されているのが現状です。
しかし、これでは本来の目的が果たせていません。
1回の救急車出動に対し、4万円以上の税金がかかるともいわれています。
こういった現状を打破すべく、現在では救急車を利用した時点で費用が発生するシステムへの移行も議論されています。
これで軽傷者の安易な呼び出しが減り、救急車の出動要請が減ると考えているためです。
しかしこの議論はまだ検討段階で、その前に対処すべきことがあると、実現には至っていません。
軽傷かどうかの線引が難しいこと、患者自身が重症か軽症か判断できないケースも多々あることが理由です。
そして生活困窮者など救急車を呼ぶのに躊躇してしまう人も増大し、その結果重篤な病気やケガ人が増えるのではないかという予想もあります。
これからどのような改正が行われるかわかりませんが、搬送費用がかかったり、診察料の一部として費用がかかることが必須になるかもしれません。
状態の細分化把握
緊急を要するケースだと患者さん自身がしっかり話すことができなかったりして、詳細を把握してから出動するのが難しい部分がありました。
しかし、現在はちょっと冷やかしのような救急車出動要請もあるため、慎重な出動が増えています。
救急車では下記のような質問をして状態把握に努めています。
- 名前
- 年齢
- 住所
- 電話番号
- 周りに誰がいるか
- 現在の症状
- その症状に至るまでの行動や行為
- 普段飲んでいる薬
- 持病
- 普段の血圧
- 過去に同様のケースがあったかどうか
こういったことを聞いて症状把握に努めています。
もし、受け答えもしっかりしていて緊急を要する症状でないと判断した場合、タクシーや自家用車での通院を勧められる可能性もあります。
必ずしもどんな患者でもウェルカムというわけではありません。
状態によっては救急車の出動が見送られるなんてことも考えられます。
ちょっと勘違いしている人も多いかもしれませんが、救急車の数というのは限りがあります。
要請すればいつでもすぐ来てくれるとは限りません。
もちろん地域によってその台数は異なりますが、ある地域では他の軽傷者を搬送している間に重傷者が2時間ほど救急車を待つ事態になり、亡くなってしまったという事例もあるぐらいです。
それだけ簡単には要求してはいけない車両ということが分かるかと思います。
結論、救急車を呼ぶのにお金はかからない。しかし将来的には不透明
現時点では救急車を呼んでもお金がかかることはありません。
かかるとしたら救急車内で処置を施されて緊急搬送診療料が発生する時ぐらいです。
ただ、だからといって気軽に呼んでいいというものではないです。
あくまでも緊急時に呼ぶ車両と理解しておきたいですね。
不適切な利用ばかりしていると、迷惑条例に引っ掛かって罰金しなければいけないなんてことも・・・。